【PART1】皆が知らない医薬品と素材・成分の相互作用〜高血圧編
日本で罹患率の高い疾病の1つとしてあげられるのが「高血圧症」です。
「令和2年(2020)患者調査(確定数)」が厚生労働省より2022年6月に公表されています。患者調査は3年ごとに実施されており、令和2年は、全国の医療施設のうち、病院6,284施設、一般診療所5,868施設、歯科診療所1,277施設を利用した入院・外来患者約211万人、退院患者約104万人が対象となりました。令和2年の調査については、総患者数の推計方法の見直しが行われました。その結果、例えば、高血圧性疾患の総患者数は、前回(「平成29年(2017)患者調査(確定数)」と同様に患者数は最多ではあるものの、約993万人から約1,503万人と約500万人増加しています。
その他上位に位置付けるのは、
「歯科関連疾患」
「2型糖尿病」
「脂質異常症」
「悪性新生物<腫瘍>」
などです。
※厚労省の令和5年(2023)患者調査の概況による調査 参考文献:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/suikeikanjya.pdf
今回は高血圧の際に服用する医薬品と素材・成分の相互作用に着目します。
◼︎そもそも、「高血圧」とは
高血圧というのは、血圧が高いという1つの症状です。たまたま測った血圧が高いときには血圧が高いといえますが「高血圧症」とは言い切れません。高血圧症とは、くり返して測っても血圧が正常より高い場合をいいます。
※国立研究開発法人国立循環器病研究センター参考文献:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension-2/
血管内の圧力が慢性的に高い状態で、心臓や血管に負担がかかります。動脈硬化や心疾患のリスクを高め、自覚症状が少ないことから「サイレントキラー」とも呼ばれます。
◼︎日本での罹患率は、なぜ多い?
日本では成人の3人に1人が高血圧症とされ、明確な原因がない高血圧は、遺伝・高塩分摂取・肥満・加齢など複数要因が複合化して起こると考えられています。また、約3400万人分は診察を受けていない/生活改善のみ/気づかれていない人々。つまり、認識されていない高血圧症がかなり存在していると言われています。
(体調が優れない場合、病気に罹患している場合は、自己判断せず医師にご相談ください。)
◼︎これに関連して起こる疾病や病気は?
高血圧症は以下のような重篤な疾患を引き起こす可能性があります。
-
脳卒中(脳出血・脳梗塞)
-
心疾患(心筋梗塞・心不全)
-
腎臓病(慢性腎臓病・腎不全)
-
動脈硬化の促進 → 全身の血管狭窄・硬化
視力障害や認知機能の低下との関連もあり、早期対策が重要です。
◼︎高血圧の際に処方される医薬品
主な薬には以下があげられます。
・カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
例:アムロジピン、ニフェジピン
→ 血管拡張、心臓への負担軽減
・ACE阻害薬(ACE-I)・ARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)
例:エナラプリル、ロサルタン
→ レニン–アンジオテンシン系を抑制し血圧を下げる
・利尿薬
例:ヒドロクロロチアジド
→ 体内の余分な水分と塩分を排出
・β遮断薬(ベータブロッカー)
例:メトプロロール
→ 心拍数や心拍出量を減らす
・その他(α遮断薬、レニン阻害薬など)
※日本高血圧学会「高血圧の話」参考文献:https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014_gen.pdf?utm_source=chatgpt.com
◼︎ 実は、高血圧治療薬と〇〇という素材成分には相互作用が!?
下記の表をみてもらいますと、わかるように、実は一般的にスーパーで売られているような食品・食材が高血圧治療薬との相互作用の原因になる可能性があります。
特に日本人にとって”大豆”は国民食でもあるので、注意をしておきたい食品の一つになります。
※ナチュラルメディシン・データベースより
素材名 |
成分概要(省略版) |
相互作用する薬 |
相互作用の内容 |
レベル / 発生可能性 / 根拠レベル |
ザクロ
|
地中海やアジアなどで栽培される果実。喉の痛み、下痢、寄生虫、痔、避妊や堕胎などに習慣的に使用。
|
ACE阻害薬(ACEIs) |
副作用のリスクが高まる可能性あり |
中程度 / Possible/ B |
高血圧治療薬 |
低血圧のリスクが高まる可能性あり |
中程度 / Possible / B |
||
カカオ
|
ポリフェノールを豊富に含み、腸・肺・肝臓・腎臓・膀胱の不調に伝統的に使用。
|
ACE阻害薬(ACEIs) |
副作用のリスクが高まる可能性あり |
中程度 / Possible/ D |
高血圧治療薬 |
低血圧のリスクが高まる可能性あり |
中程度 / Possible / D |
||
大豆 |
世界で栽培され、豆乳や大豆タンパクとして利用。イソフラボンを多く含み、女性ホルモン様の作用をもつ。 |
高血圧治療薬 |
低血圧のリスクが高まる可能性あり(相加作用) |
中程度 / Possible / A |
※レベル:医薬品との相互作用のレベルを表しています。
(高|この医薬品と併用してはいけません、中|この医薬品とは慎重に併用するか併用しないでください、低|この医薬品との併用には注意が必要です)
※発生可能性:発生可能性レベルを表しています。
(Likely|厳密に管理されたヒト試験において、この相互作用の存在が明確に示されています、Probable|厳密に管理された試験での報告はないが、ヒト試験または動物試験で相互作用が示されており、さらに複数の症例報告が存在します、Possible|相互作用は動物実験または試験管内(in vitro)研究で確認されているか、ヒトにおける症例報告や矛盾する臨床研究で報告されています、Unlikely|相互作用は動物実験またはin vitro研究で示されているものの、ヒトでは発生しないことが確認されています。)
※根拠レベル:エビデンスレベルの定義を表しています。
(A|高品質のランダム化比較試験(RCT)/高品質のメタアナリシス(定量的システマティックレビュー)、B|非ランダム化の臨床試験/非定量的なシステマティックレビュー/質の低いRCT/臨床コホート研究/症例対照研究/歴史的対照研究/疫学研究、C|専門家間のコンセンサス(合意)/専門家の意見、D|逸話的な報告(アネクドータルエビデンス)/試験管内(in vitro)または動物実験薬理学に基づく理論的根拠)
※上記情報は「ナチュラルメディシン・データベース」(弊社発行)に帰属します。情報の二次利用などは固く禁じます。
※食品、健康食品・サプリメントを利用して身体の不調を感じたらすぐに使用を中断し、医療機関で診てもらいましょう。
◼︎最後に
このようにどちらも健康のためにと思って、摂取している内服薬と健康食品およびサプメントには気をつけないといけないことがあります。
健康の保持・増進の基本は、健全な食生活、適度な運動、休養・睡眠で す。
「健康食品」は、多くの場合が「健康な成人」を対象にしています。
健康食品・サプリメントは医薬品ではございません。
また本記事の内容は一部の例を抜粋したものでございます。
体の不調を感じたり病気に罹患している場合は、自己判断せず医師にご相談ください。
健康食品・サプリメントを利用して
身体の不調を感じたらすぐに使用を中断し、医療機関で診てもらいましょう。
我々はナチュラルメディシン・データベース(NMBD)を一人でも多くの方にお届し、このような相互作用の発生を未然に防いで行きたいと考えております。
皆様のお力添えを何卒よろしくお願いします。