電気を供給する機器としてのSHSコントローラー設計のポイント
2018年2月9日
途上国未電化家庭用太陽光システムファンド
今回は,SHS(ソーラーホームシステム)の技術的なスペックを設計するにあたって,留意しなければならない点をいくつかご紹介いたしましょう.ちょっとテクニカルな内容になりますが,できるだけ平易にご説明したいと思います.
1.WとWh
まずは,電気を表現する単位として,W(ワット)と,Wh(ワットアワー)を簡単に説明いたします.自分は理系でそんなこと先刻承知している,という方は,スキップしてください.
電気がどんなことができるか?という指標は,「仕事率」(単位は W) です.物理学的に言うと,一秒間にどれだけの仕事ができるか?という指標ですね.
電気を利用するということは,電気を消費して何かを行う機器(デバイスやアプライアンスなどと呼ぶことが多いです)を使用するということです.たとえば,われわれのEGAOに付属するLED灯は,約300ルーメンの明るさの室内灯で,約3Wの電力を消費します.19インチのTVは約10Wの消費電力です.一方で,比較のため かなり効率のよい冷蔵庫は20W程度です.
Wとは,その瞬間にどの程度の電力が使われるか?もしくは発生できるか?という場合に用いられます.一方で,それが継続する時間をかけたものが,Whの単位で表される電力量となります.電力量とはエネルギーに他なりません.
たとえば,3WのLED灯を,一日に4時間(4h)点灯させるなら,一日に 3W×4h=12Wh の消費電力となります (単位も かけ算の形で表されます).冷蔵庫の場合には一日に24h動かしますので,一日に 20W×24h=480Wh となるわけですね.これがけっこう大きいので,冷蔵庫は未電化地域では導入が難しくなります.
また,上では「消費」側の話をしましたが,おなじことは「発電」側にも言うことができます.10Wの太陽光パネルは,(ある条件下で) 10Wの電力を生み出します.そしてその状態が1時間続いたら,10Whの電力量(電気エネルギー)を発電することになります.
実際は,10Wの太陽光パネルは「ある標準化された日照条件 (ソーラーデイと呼びます) の下で」10Wの発電を行います (そしてWp (Watt-peak)という単位を用います).ソーラーデイ条件での10Wpの太陽光パネルの発電は,太陽の傾きが変化することを考慮して,一日に45Whの発電電力量となります.曇りの日や雨の日は,もっと発電電力量が小さくなります.逆に途上国(たとえばエチオピア)ですと,実際の晴天の場合,ソーラーデイより発電電力は大きくなります.
電池(バッテリー)に貯めることができるのは,電気エネルギーですので,Wh の単位で表されます.EGAOのコントローラーに内蔵されるリチウムイオン電池は,73Whあるいは146Whの定格容量となっています.実際に使用できる容量は,保護回路によって,それよりやや少なくなり,また長く使用すると徐々に少なくなっていきます.これはみなさんがスマホなどで経験されているとおりですね.ちなみに,わたしのMacBook Pro 15inchのリチウムイオン定格容量は76Whです.EGAOはそれと同等,もしくは2倍の容量というわけです.
3WのLED灯2灯と,10WのTVを同時に使う場合,3W×2+10W=16W の消費電力となりますので,たとえば64Wh実際に使える電池では,64Wh/16W=4h ですので,フル充電後,4時間使用することができることになります.
2.DCとAC
電気には,直流(DC; direct current)と,交流(AC; alternating current)があります.交流は,プラスマイナスが頻繁に入れ替わる(1秒間に50周期のものを50Hzといいます.Hzはヘルツですね)ものです.電力会社から送られてくる電気は交流ですので (交流の方が電圧を変えるのが簡単なのです),ほとんどすべての電気製品は交流で使うように設計されています.
でも,実は,パソコン,LED,TV,スマホなどの半導体を使っているものは,内部は直流で動作しています.太陽光パネルや電池の供給する電力も直流になります.よくきくUSBは,直流5Vの規格ですね (USB-Cは一部異なる電圧もカバーします).
したがって,SHSは,通常は直流仕様の機器の組み合わせとなっていて,市場に広く出回っている電気製品(より安いです)はそのままでは使えません.
3.EGAOのシステム構成とコンセプト
EGAOのコントローラーは,直流システムと交流システムの両方が使えるように設計しています.コントローラーへの入力もそうです.太陽光パネルの直流と,電力系統からの交流からの両方で充電することができます.出力の方も,直流12Vと5V (USB),交流用電気製品も使えます.
市場として,未電化状態の家庭だけでなく,電気が来ていてもかなり不安定な状態にある家庭(かなり多いです)も対象としていますし,その意味でも,交流対応以外に,UPS(無停電電源)機能も搭載しています.
EGAOの未電化家庭向けモデルは3種類あり,次のシステム構成です.懐中電灯型モバイルバッテリーは,携帯電話やスマホの充電ニーズが高いことも考慮したものです.
モデルX [フルスペック・モデル]
モデルL [TV廉価版モデル]
モデルS [照明オンリーモデル]
下に,3つのモデルの場合のグラフを添付します.縦軸はWhですが,上のグラフはスケールが2倍になっている点にご注意ください.
左側の青色の棒が 電気の供給側(左がバッテリーがフルチャージした場合,右がソーラーデイ状態でのチャージ量)です.
右側の赤色の棒が 電気の需要側で,各種デバイスの一日の電力量消費量を表しています.
それぞれのモデルが「どの程度 使えるか?」を ご覧になってください.
松尾 直樹
1.WとWh
まずは,電気を表現する単位として,W(ワット)と,Wh(ワットアワー)を簡単に説明いたします.自分は理系でそんなこと先刻承知している,という方は,スキップしてください.
電気がどんなことができるか?という指標は,「仕事率」(単位は W) です.物理学的に言うと,一秒間にどれだけの仕事ができるか?という指標ですね.
電気を利用するということは,電気を消費して何かを行う機器(デバイスやアプライアンスなどと呼ぶことが多いです)を使用するということです.たとえば,われわれのEGAOに付属するLED灯は,約300ルーメンの明るさの室内灯で,約3Wの電力を消費します.19インチのTVは約10Wの消費電力です.一方で,比較のため かなり効率のよい冷蔵庫は20W程度です.
Wとは,その瞬間にどの程度の電力が使われるか?もしくは発生できるか?という場合に用いられます.一方で,それが継続する時間をかけたものが,Whの単位で表される電力量となります.電力量とはエネルギーに他なりません.
たとえば,3WのLED灯を,一日に4時間(4h)点灯させるなら,一日に 3W×4h=12Wh の消費電力となります (単位も かけ算の形で表されます).冷蔵庫の場合には一日に24h動かしますので,一日に 20W×24h=480Wh となるわけですね.これがけっこう大きいので,冷蔵庫は未電化地域では導入が難しくなります.
また,上では「消費」側の話をしましたが,おなじことは「発電」側にも言うことができます.10Wの太陽光パネルは,(ある条件下で) 10Wの電力を生み出します.そしてその状態が1時間続いたら,10Whの電力量(電気エネルギー)を発電することになります.
実際は,10Wの太陽光パネルは「ある標準化された日照条件 (ソーラーデイと呼びます) の下で」10Wの発電を行います (そしてWp (Watt-peak)という単位を用います).ソーラーデイ条件での10Wpの太陽光パネルの発電は,太陽の傾きが変化することを考慮して,一日に45Whの発電電力量となります.曇りの日や雨の日は,もっと発電電力量が小さくなります.逆に途上国(たとえばエチオピア)ですと,実際の晴天の場合,ソーラーデイより発電電力は大きくなります.
電池(バッテリー)に貯めることができるのは,電気エネルギーですので,Wh の単位で表されます.EGAOのコントローラーに内蔵されるリチウムイオン電池は,73Whあるいは146Whの定格容量となっています.実際に使用できる容量は,保護回路によって,それよりやや少なくなり,また長く使用すると徐々に少なくなっていきます.これはみなさんがスマホなどで経験されているとおりですね.ちなみに,わたしのMacBook Pro 15inchのリチウムイオン定格容量は76Whです.EGAOはそれと同等,もしくは2倍の容量というわけです.
3WのLED灯2灯と,10WのTVを同時に使う場合,3W×2+10W=16W の消費電力となりますので,たとえば64Wh実際に使える電池では,64Wh/16W=4h ですので,フル充電後,4時間使用することができることになります.
2.DCとAC
電気には,直流(DC; direct current)と,交流(AC; alternating current)があります.交流は,プラスマイナスが頻繁に入れ替わる(1秒間に50周期のものを50Hzといいます.Hzはヘルツですね)ものです.電力会社から送られてくる電気は交流ですので (交流の方が電圧を変えるのが簡単なのです),ほとんどすべての電気製品は交流で使うように設計されています.
でも,実は,パソコン,LED,TV,スマホなどの半導体を使っているものは,内部は直流で動作しています.太陽光パネルや電池の供給する電力も直流になります.よくきくUSBは,直流5Vの規格ですね (USB-Cは一部異なる電圧もカバーします).
したがって,SHSは,通常は直流仕様の機器の組み合わせとなっていて,市場に広く出回っている電気製品(より安いです)はそのままでは使えません.
3.EGAOのシステム構成とコンセプト
EGAOのコントローラーは,直流システムと交流システムの両方が使えるように設計しています.コントローラーへの入力もそうです.太陽光パネルの直流と,電力系統からの交流からの両方で充電することができます.出力の方も,直流12Vと5V (USB),交流用電気製品も使えます.
市場として,未電化状態の家庭だけでなく,電気が来ていてもかなり不安定な状態にある家庭(かなり多いです)も対象としていますし,その意味でも,交流対応以外に,UPS(無停電電源)機能も搭載しています.
EGAOの未電化家庭向けモデルは3種類あり,次のシステム構成です.懐中電灯型モバイルバッテリーは,携帯電話やスマホの充電ニーズが高いことも考慮したものです.
モデルX [フルスペック・モデル]
太陽光パネル40Wp, バッテリー146Wh, LED灯×3, 19” TV, 懐中電灯型モバイルバッテリー×2
モデルL [TV廉価版モデル]
太陽光パネル20Wp, バッテリー73Wh, LED灯×2, 19” TV, 懐中電灯型モバイルバッテリー×2
モデルS [照明オンリーモデル]
太陽光パネル10Wp, バッテリー73Wh, LED灯×2, 懐中電灯型モバイルバッテリー×1
下に,3つのモデルの場合のグラフを添付します.縦軸はWhですが,上のグラフはスケールが2倍になっている点にご注意ください.
左側の青色の棒が 電気の供給側(左がバッテリーがフルチャージした場合,右がソーラーデイ状態でのチャージ量)です.
右側の赤色の棒が 電気の需要側で,各種デバイスの一日の電力量消費量を表しています.
それぞれのモデルが「どの程度 使えるか?」を ご覧になってください.

松尾 直樹