2016年ヴィンテージは順調に育成中!
投資家の皆様
お世話になっております。Hikaru Farmの長谷光浩です。高山村は、雪もかなり溶けてきましたが、標高が高く気温が上がらない福井原の畑近辺には、まだ70~80センチの積雪がある状況です。今週以降、寒波が来る可能性があるので、更なる積雪からぶどう垣根を守るため、雪に埋まっているワイヤーを全列掘り起こしていきました。
福井原の現在。スノーシューを履いて畑に入ります。足跡の下に約70~80センチの雪があります。
さて、先日は、2016年に収穫したブドウを仕込んでいる、東御市にあるアルカンヴィーニュに伺いました。ここは、私が2015年に一期生として栽培と醸造を学んだ学校であり、醸造設備を備えたワイナリーでもあります。この学校で学んだ方以外でも、ここでワインを仕込むことができ、2016年ヴィンテージは多くの農家の方がここを利用しています。
次男は初のアルカンヴィーニュ。当日は授業があり、私が多大な影響を受けた農楽蔵の佐々木佳津子先生もいらっしゃいました。
2016年は、北信に限らず長野県全域では記録的日照不足と長雨の影響で、非常に困難なヴィンテージとなりました。畑がある福井原も例外ではなく、9月中旬に糖度が上昇した果実も、長雨で水を吸った影響で、糖度が2~3度も下がることとなりました。その結果、糖度の再上昇を待つために10月の下旬まで待ちに待っての収穫となりました。幸いにも、長雨にも関わらず病気はほとんど出ず、最終的には糖度も20度を超え、酸もしっかりと残りデータ上は申し分のないぶどうを収穫することができました。
今回は、アルカンヴィーニュのタンクや仕込タイミングや収穫量のことも考慮して、赤品種と白品種をすべて一緒に仕込む混醸スタイルとなりました。シャルドネが40%とピノ・ノワール30%が主体ですが、以外にもリースリング、ピノグリ、ピノブラン、ゲヴルツ、ソーヴィニヨンブランなども混ざっています。
アルカンヴィーニュにて、プレス機にぶどうを投入しているところ(ホールバンチプレス)。
デブルバージュ作業中(プレス果汁を静置し、上澄みを取る作業)。
そして、何よりも今回の混醸仕込みは、今後一部のキュヴェで検討しているスタイルの実験的意味もあります。ヨーロッパのアルザス地方他では、混植混醸の仕込みという伝統があり、畑にいろいろなふどう品種を植え、そして同じタイミングで一気に収穫し、それらをいっしょに仕込むワインづくりがあります。当然、糖度や酸度、香りもぶどう品種ごとに違うわけでバラツキが出ることを想像してしまいますが、意外にも複雑な香りと酒質に加え一体感があり、大変印象に残るワインとなります(個人的意見ですが)。
すでに、福井原の畑には、メイン品種に多数クローンを導入するだけでなく、複数の品種を混植してあり、今後混醸のスタイルを積極的に取り入れていきたいと考えています。ピノ族(ピノノワール、ピノグリ、シャルドネなど)の混醸はシャンパーニュなどから見てもよいワインを産むことは想像できますが、今後はトラミナール系など、香りや熟期などさまざまな要素を考慮し、畑でブレンドする感覚で実践していきたいと考えています。何よりも、品種に捕らわれず土地の良さを追求し、より良いワインとなるよう、工夫していきたいと考えています。
さて、肝心のワインですが、2月現在順調に生育を続けております。野生酵母で発酵を開始して3か月以上が経過しましたが、今はMLF(二次発酵、乳酸発酵)がほぼ終わり冬休みに入っている状態です。絞った直後はローズ調の色調だったワインもピンクに、そして現在はややオレンジがかった色に変化してきました。
オレンジワインといったところでしょうか?非常にきれいな色となりました。
醗酵から1か月位は、酸が強く固かったワインも、現在では果実味(甘味)もアフターに現れ、全体として丸みを帯びてきました。そして、香りはレモングラスや柑橘系に加え、イチゴやカシスのベリー系などさまざまな香りが鼻を抜けます。アフターには、ほんのりとハチミツの香りも感じられます。
そして、さらにしばらく置いて温度があがると、トップノートにフリンティ、チョーキーな火打石のようなニュアンスがはっきりと感じ取れました。よく、石灰質土壌にこの香りが出るとは言われていますが、過去の試飲の経験や土壌比較から個人的には石灰が原因ではなく、標高や気温(夜温)が影響しているのでは?と強く感じています。ブルゴーニュ以外の、石灰質土壌ではない冷涼地のシャルドネやピノにそういったニュアンスが出ていることを何度も感じたことがあるからです。
この香りが出ているということは、やはり福井原はピノ族には向いているのでは?と感じて止みません。そして今後、どういうワインになるか、想像すると楽しみでなりません。
ちなみに、アルカンヴィーニュの醸造責任者いわく、「寝かすことによりまとまり、さらに良くなる」という有難いお言葉を頂きましたので、春先以降に瓶詰をし3か月以上瓶熟をしてからリリースをする予定です。そのころには、ワイナリーも稼働に向けてかなり形になっている状況だと思います(2017年3月末着工予定)。
引き続き、どうぞ宣しく御願いいたします。
Hikaru Farm
長谷光浩