グローバルGAP(研修会)について

2017年1月29日
高山村ドメーヌ長谷ワイナリーファンド

投資家の皆様

 

お世話になっております。Hikaru Farmの長谷光浩です。

畑がある福井原も、日中の好天と気温の上昇で雪はかなり溶けたものの、いまだ約80センチの積雪があり、畑での作業を中断しています。現在は、その時間を利用し、会計、業務作業、研修や勉強会に時間を充てています。


 先日、高山村の若い葡萄栽培農家、ワイナリー関係者や農業研修生(主に県外から移住組)を集め新潟で12日の研修会がありました。主なテーマは、新潟のワイナリー視察、ITをつかった農業管理システムの実践と、グローバルGAPについてです。

その中のGAPについては、私たちの考える未来の農業者像ともリンクし非常に有意義な課題提起でした。GAPとは、思想、行動を伴った規範で(Good(適切)、Agricultural(農業)、Practices(実践行為))、ヨーロッパを中心に世界中で浸透しつつある規範です。実践している農業者には第三者機関から、「農場保障」という意味で認証がでます。
 日本では、消費者への販売促進や法令の関係で考えられることが多く、認証のみが独り歩きし(有機栽培なども)、その根底にある思想や規範は根付いないようです。

GAPの規範の根底は、農業由来の環境破壊や健康被害が問題となってきている昨今、その原因となる農業者が責任をもって行動しなくてはならないという考えのもとにあります。農業者が規範をもって取り組みを改善し管理していくことで、結果として環境負荷の低減、健康被害の低減、そして労働環境の改善などにつながり、最終的には消費者にもメリットが生まれ、収益にも改善が図られ持続可能な農業にもつながります。このGAPの思想や規範は、私たちが今まで感じ、取り組みや考えにも共通点があり、素直にその本質が理解できるような気がします。

当日の会議の資料より

   
私たちが畑仕事で特に大切にしていることは、全体の環境に負荷を与えない、ことです。もとは、幼い子供たちに安心安全で美味しい野菜や果物を自分でつくりたい・・・そういう想いからスタートしました。
 長野に入植したばかりは、野菜を出荷するにあたり、一般的な防除暦(病害虫を予防するための農薬散布スケジュール)を、意味も考えず実践しました。ある時に、防除暦の消毒タイミングを数回カットしたのですが、結果として虫の食害が進み出荷する作物の1
/3が被害を受け(栽培指導者から教えらえていた通り)、収入に大きく打撃を受けました。
 ただ、どうしても防除に使用する農薬の種類や量、散布中に自分に飛散すること、そして何よりも自分の幼い子供が食べる野菜に薬をかけるのが嫌で、なんとか散布しない、または減らす方法はないか?と模索をしていました。

色々考えたあげく翌年からの野菜に関しては、幼い子供のことも考え(収入は無視し)、一切の農薬を断ちました。
 芽や若葉のころは虫による食害が多く、手で補殺が必要ですが、意外なことに植物が大きくなると虫もほとんどつかず病気にもならず、実もしっかりつき滋味で美味しい野菜がたくさん採れ始めたのです。それよりも、何よりも安心して幼い子供にも与えられることの喜びが大きかったのです。
 そのことがきっかけで農薬について、そして全体環境や自然の仕組みについて、いろいろ考えを巡らせるようになりました。



無農薬の野菜たち。毎日、多品種の野菜が採れます。主に自分たち用につくり、一部を出荷しています。



東京他に出荷しているブルーベリーは、無農薬、無施肥栽培です。無施肥でも、毎年素晴らしく大きな実を、毎日沢山ならします。標高800mが生む寒暖差により、非常に糖度と酸味のバランスがよく、リピーターを多数頂いております。

 

植物は、その植物単体で生育しているのではなく、全体環境の中で生きている・・・と考えればすんなりと納得できます。
 殺虫剤等を散布すると、特定の虫だけでなく、そこにいるすべての虫や微生物に作用します。もちろん、食害する虫の天敵も絶えます。農薬を打ったあとの畑は、不気味なくらい静寂に包まれます。問題は、その後で、食害虫はその植物をめがけて遠くからも飛んできますから、数日で作物に虫がつきます。しかし、そこには天敵はおらず、しかも天敵他の虫は、その作物自体には興味がないので、食害虫だけがさらに増えることになります(「リサージェンス」と呼ばれています)。
 もちろんこの作用は、植物の地上部分だけでなく目に見えない地中でも起こり、微生物の均衡状態を崩しているはずです。

 

これらの経験や仮説が元となり、如何にして作物を全体環境の中で育てるか、そしてその全体環境に適合させるか、そのためには全体環境に負荷を与えないことが一番大切だと考えています。(農薬だけでなく、過度な肥料も植物の植生や微生物のバランスを崩し環境負荷の原因となるはずです。)
 

ぶどう栽培にも、除草剤不使用や、化学農薬使用を最小に、最終的には使用しないところまで考えているのはそのためです。ただし、ぶどうを含む果樹栽培は野菜とは違い、化学農薬を使用しないと病気などが多発し非常に栽培が困難なことは事実です。そもそも、この環境に存在しなかった外来種植物にとっては厳しい生育環境なのは当然のことだと思います。
 ただ、ゆっくりと時間をかけていくことで徐々にその生態系の中で相互に作用しはじめ、ぶどう本来の力を発揮できると信じています。結果として、生き生きとしたぶどう本来の果実の味や旨さにつながると思っています。時間はかかるかもしれませんが。


 そして、この土地や風土を反映させるため、ぶどうを野生酵母で発酵させることへのこだわりも、この考えの一部です(もちろん、自分が好きなワインのつくり手は、ほぼ野生酵母で発酵させていることや、私が学んだ多くの醸造家の、野生酵母への考え方の影響も大きいですが)。
 この環境から産まれるぶどうを、全体環境に負荷を与えず相互に作用し存在する微生物層を利用して醗酵させることこそ、真に土地や風土を反映したものだと考えています。それが、この素晴らしい全体環境の中でワインをつくることの意味であり、醍醐味なのだと思います。

 

話は戻りますが、この全体環境や風土を大切に守っていくために、私たちが今後、GAPの規範を取り入れていくことはまさに理にかなっているように思います。環境負荷の低減だけでなく、労働環境やさまざまな取り組みの改善は、すべてつながっていると思うからです。持続可能な農業の一環としてワインづくりを考える上で、非常に大切なきっかけとなりました。

引き続き宜しく御願い申し上げます。

Hikaru Farm
長谷光浩


ファンド情報

高山村ドメーヌ長谷ワイナリーファンド
合同会社Hikaru Farm
会計期間
2018年8月1日 ~ 2023年7月31日
一口
30,000
償還率
36.4 %
参加人数
236
調達実績
8,680,000
【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
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