未電化状態の人々の暮らしの実態ってどんなのだろう?

2018年2月4日
途上国未電化家庭用太陽光システムファンド

ついに,サポーターの方々が202人となりました!お一人平均で,2.5口もの出資を頂いており,18日間で目標の 1/4(26%)が達成されたことになります.どうもありがとうございます!
 
1/25に,”Escaping Darkness—Understanding Consumer Value in PAYGo Solar” というレポートのことをご紹介しました.これは,ローカルな人々にとって「実態として」ソーラーホームシステム(SHS)や,その分割払い手段であるPay-As-You-Goの「実態」を,アフリカ4カ国(コートジボアール,ガーナ,ケニア,タンザニア)でインタビューベースの詳細な実態調査したレポートで,かなり興味深いので,その概要を紹介いたしましょう.

わたしたちの行おうとしていることは,途上国の貧しい人にものを販売するビジネスであるわけです(援助でなく対等なビジネスなのですね).たとえば3万円の小売価格は,彼らにとって非常に大きな出費であるわけです.ポンとキャッシュで払えるレベルではありません.でも,彼らも,夜間照明に灯油を使っているわけで,その出費は年間数千円〜1万円程度です.もちろん,すこしずつたとえば毎週購入しているわけです.言い換えると,この程度の出費を分割で行うことができるなら,彼らだって支払うことができるわけです.
 
それを可能とするのが,Pay-As-You-Goという仕組みです.この技術は,「支払った分だけ使うことができる」という技術で,ユーザーが(お金に余裕のあるときに)前払いした分だけ,その金額に応じて,使うことができます(支払わなければシステムがOFFの状態になります).途上国の一部の国々では,携帯電話による支払いができ,これと組み合わせることで,人口密度の低い国々でも,分割払いシステムを,より有効に機能させることができます.われわれのSHSでも,もちろんこの技術を搭載いたします.
 
このレポートの調査結果の概要は,以下の通りです:
 
このレポートで調査対象となったプロバイダーのPAYGモデルは,次の2つです:
  • 日単位の支払い(携帯電話ウォレット引落)×1年間 [プロバイダー例: M-KOPA,PEG].頭金は約3ヶ月分.90日間支払いがないと(その間は使えない)再開するための追加料金が必要.支払期間が1年間の場合でも「中断」期間があれば,ユーザーは(繰越金や追加利息なしに)それを延ばすことができるという柔軟性がある.
  • 月単位の支払い×3年間 [プロバイダー例: BBOXX,Off-Grid Electric].頭金がないケースもある.支払いは毎月一括である必要はないが期日から3日以内でないとシステムを止められてしまう.支払いが滞った場合には,その分を支払い終えるまでシステムを使うことはできない (ただ追加利息はない).数ヶ月支払いが滞った場合には差し押さえもあり得る.3年の期間を設定する場合には,毎月の支払いはかなり低く抑えられる.支払い後 10年目まで,月単位のサービスフィーでプロバイダーが保守をしてくれるケースもある.
 
1年と3年の支払期間の差異を特徴付けたものが下の表です:
 
 
また,価格125ドル,頭金20ドルのSHSの場合の,1年,3年,5年の支払期間のケースのユーザーのシミュレーションは以下の通りです.インフレ率の高い途上国での利息支払いもバカにならないですね:
 
 
調査のサマリーは,以下のようなものとなります:
 
1.ソーラー製品購入の最大の動機は,文字通り「さまざまな暗闇」から逃れるため
SHSの利点は,わかりやすい種々の非常に大きなライフスタイル改善はもちろんですが (この点は強調しすぎることはありません),その中で,印象に残ったものとしては,次のようなものです:
  • TVは,より広い外界と繋がる窓になっている;
  • とくに親の責務として子供達にその窓を見せてあげたい;
  • SHSが使えることで,プライド,自分の価値(dignity),自分の業績(achievement) といったものを強く感じる;
  • 訪問者にSHSを見せることで,より強いもてなしができ (携帯電話充電などもしてあげられる),一種の顕示欲と共にとてもうれしい.
 
2.長期の支払いによって高価なものも手に入る
これはPay-As-You-Goのもっとも重要な点で,それが再確認されました.
 
3.SHSの所有欲が強い
わたしもバングラデシュで学びましたが,レンタルや,隣から電気を分けてもらうサービス型より,一時的に支出が多くなったとしても,自分で所有したいという気持ちが強いようですね (サービスモデルへの理解が薄いようです).所有者は,保証期間に期限があることも理解しているとのことです.
 
4.エネルギー支出は増えるが満足度と優先度は高い
ケニアの場合,典型的なケースでは灯油代が月額2〜4ドル.PAYGの場合には6〜15ドルと,2〜3倍の支出.ただ,この追加負担が耐えられないと答えた家庭はなかったようで,食費,教育費,医療費に食い込むことなく支出可能で,また十分にその価値がある(よろこんで支払う)ということのようです.
SHS購入の判断は,コストの問題ではなく,ライフスタイルを大きく変えたい,という欲求ということでした.
ほとんどすべてのSHS所有者は,基本システムから,TV付きにアップグレードしたいと答えていました.
また,エネルギー支出の大きさは,所得にあまり関係ないということでした.
 

また,灯油(ケロシン)以外にも,SHSで代替できる支出がいろいろあるようです.一方で,灯油の比率は減ってきているようですね.
 
 
5.購入の意思決定は主として男性が行う
言い出しは奥さんでも,やはり意思決定は旦那さんが多いようですね.奥さんも,たとえSHSへの出費によってやりくりが難しくなっても文句は言っていないようです.
 
6.支払いのパフォーマンスはいろいろな要素で決まる
単純入手が容易かどうか,というだけでなく,いくつもの要素が関係するようです:
  • 支払いが滞ったときのキャッチアップ.支払いタイミングに柔軟性を持たせることでこの点は緩和でき,送れたとしてもどうにかして支払いを完了させようとします.
  • 想定外の出費.短期間の支払い猶予を設定することで,この点を緩和できます.
  • 契約事項の不十分な理解.売手と買手の相互不信に繋がらないようにする必要があります.
  • 支払い回収手続きの管理.携帯電話による支払い回収が用いられる場合には問題ないが,知られていない場合には支払いが滞る可能性が高くなる傾向にあります.
 
7.PAYGによるファイナンスは,貸手と借手にとって通常の融資と比較して,リスク評価がむつかしい
PAYGはまだ新しい方法なので,貸手にとって,リスクを評価する十分な経験やデータが不足しているという課題があります.借手によっても,契約の内容をきちんと理解することが難しい場合もあり,それがリスクに繋がります.
 
その他,携帯電話充電やTVによるサッカー観戦などをビジネスとしているケースもいくつも見られたと言うことでした.ビジネスキットとして販売されているケースもあり (SHS支払い率は良好),未電化費率が高い村の充電サービスで月額35ドルもの収入もあったとのことでした (ただソーラー製品普及や,西アフリカでは社会的慣習の面から難しいケースもあるようです).
 
もうひとつ,興味深いデータがありました.「自分をgood payerと思うか?」というデータです.PEARは,TVをトリガーに普及させようとしていますが,資金回収リスクは比較的小さそうですね.
 
また,いろいろ興味深いレポートがありますので,機会を見つけてご紹介いたしましょう.
 
PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
松尾 直樹
 

ファンド情報

途上国未電化家庭用太陽光システムファンド
株式会社PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
会計期間
2019年1月1日 ~ 2021年12月31日
一口
10,500
償還率
3.98 %
参加人数
526
調達実績
17,490,000
【ご留意事項】
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