
私のフェアトレード事業の原点には、大学時代に出会った恩師、山本純一先生の存在があります。
先生は長年、メキシコ南部チアパス州の先住民地域に通い続け、マヤビニック生産者協同組合の活動を実践された研究者です。
すでに大学を退官されていますが、このたび『フェアトレード原論 ラテンアメリカから問い直す』という研究の集大成を出版され、この日曜日に、その出版記念会に参加してきました。
全358ページに、先生の情熱と見識、そしてご経験が詰まっており、間違いなく、この本が私のバイブルになると確信しております。
山本先生の著書が気になる方はこちらからご覧ください。
私は学生時代、山本先生の研究室で進められていたフェアトレード・プロジェクトに関わりました。そこでは、フェアトレードの理念のもと、生産地の人びとにとって、そして私たち社会全体にとって、「本当に身のある取り組み」を模索していたように思います。
先生は答えを示すのではなく、問いを立て、その問いに対しての答えを求め行動される方でした。
卒業後、私は、山本先生の後押しもあり、メキシコ・チアパス州のマヤビニック協同組合のコーヒーを扱う事業として、株式会社豆乃木を立ち上げました。
起業後1〜2年で「思いだけでは、食べていくことができない」という現実に直面しましたが、試行錯誤し、こうして14年間、迷いながらも継続してこられたのは、研究者でありながら現場に通い続けてきた先生の背中、そしてその考え方に触れてきたからだと思います。
山本先生の出版記念会の場で、山本先生と、そして会場にいる皆さんと、私はひとつの約束をしました。
それは、先生がもう一つの夢として大切にしてきた、メキシコ・オアハカ州 UCIRI(ウチリ) からのフェアトレードコーヒーを、日本に届けることです。UCIRIもまた、先住民の人びとが協同組合として自立を目指し、厳しい状況の中で歩みを続けてきたところです。長年語られてきたその想いを、私が実践として引き受けたいと考えました。
今回のクラウドファンディングでは、ペルー産フェアトレードコーヒーの輸入資金を募っています。
産地は異なりますが、私たちが目指しているのは一貫して、生産者と対等な関係を築き、長く続く取引を実現することです。
その意味で、フェアトレードの原点ともいえるUCIRI(世界初のフェアトレード・ラベルである「Max Havelaar」の誕生に直接関わっている)を、将来的に取り扱うことは、私たちの事業にとって必然の展開だと考えています。
ペルーでの取り組みを着実に積み重ねながら、その先にあるUCIRIとのフェアトレードも見据えていくこと——それが、私が恩師から受け取った夢のつづきに、事業として応えていく道だと思っています。
写真は、左が山本純一先生。右は獨協大学の北野収先生。