ケニアの政治について【前編:2022年大統領選挙】
2022年9月22日
LIP-HAKKIケニアファンド
ルト氏、オディンガ氏を退け当選
2022年8月9日、ケニアにて5年ぶりの大統領選挙の投票が行われました。与党・統一民主同盟(UDA)のウィリアム・ルト副大統領(55歳)が、対立候補のオレンジ民主運動(ODM)のライラ・オディンガ元首相(77歳)を退け勝利しました。独立選挙管理・選挙区画確定委員会(IEBC)の発表によると、投票率は65.5%、得票率はルト氏が50.49%(717万6,141票)、オディンガ氏は48.85%(694万2,930票)で、1.64ポイントの僅差での勝利でした。オディンガ氏は投票数の不正操作があったとして選挙結果無効の異議申し立てを行いましたが、9月5日にケニアの最高裁判所はオディンガ氏の申し立てを退け、ルト氏の当選が確実となりました。これを受け、9月13日に第5代大統領に就任しました。

最高裁判所の判決を受けて、ケニアの2032年のドル債利回りは、ナイロビで9月5日午後5時15分に36ベーシスポイント下がって12.41%となり、1ドルあたり120.25ケニア・シリング(KES。2022年9月13日時点1.2円)とほとんど変化しませんでした。
ナイロビに拠点を置くAIB-AXYS Africaは、大統領選の結果が支持されれば、「選挙時の不安定な状況が正常に戻るのが見えてくるため、投資家の信頼が高まる可能性がある」と述べています。
「庶民派」ウィリアム・ルト
ルト氏は1997年に国会議員に当選して以来2013年まで、内務相や農務相、高等教育相を務め、この10年間は副大統領として前ケニヤッタ政権を支えてきました。独立以来ケニア国内で影響力の強い家系の出身であるオディンガ氏とは対照的に、15歳で初めて靴を履き農村部で鶏肉の路上販売をしていた生い立ちから副大統領にまで出世したルト氏は、自らを「庶民」出身であるとして、今回の選挙を「権力者一族」との闘いと表現しました。雇用創出マニフェストで若者の心を掴む
ケニアでは若者の失業率が高く、18歳から34歳の失業率は約40%と言われています。更には毎年80万人の若者が新たに雇用市場に参入していますが、十分な雇用機会はありません。ルト氏は雇用創出やボトムアップ的な経済政策、貧困削減を公約に掲げ、若者から厚い支持を得ました。
ルト氏のその他の主なマニフェストは以下の通りです。
● 農業と食料安全保障〔農業生産性向上のため2,500億KES(約3,000億円)を5年以内に投資し、食料輸入を30%減らす〕
● 零細・中小企業への金融支援(500億KESの基金で中小企業向け貸し付けを行う)
● 住宅補助(毎年25万戸の低廉な家を供給する)
● ヘルスケアへのアクセス(国民保険(NHIF)の整備を行う)
ルト氏は選挙期間は自らを「Hustler(やり手)」と称し、ケニアを「Hustler Nation(やり手の国家)」にしていくと語りました。今後の公約実現が注目されます。
※ ケニアの政治について【後編:政局の歴史】に続きます。