気候変動問題: パリ協定のエッセンス

2018年6月2日
途上国未電化家庭用太陽光システムファンド

サポーターの方が 400人 を超え,現在 407人となりました.どうもありがとうございます.
 
ちょっといろいろ忙しくて,ブログの更新が滞っていて申し訳ありません.
 
わたしは,この 途上国での SHS 普及プロジェクトのほかに,気候変動問題の研究者でもあり(四半世紀以上 気候変動問題に携わっています.このSHS プロジェクトもそのひとつですね),そちらの仕事が非常に重たくなっていました.寝る間もない... あと二週間くらいで終わる予定で,ラストスパートです.
 
もちろんSHS のコントローラー開発の方も進めています.土曜日のきょうも打ち合わせで,もうすこし具体的なイメージができたらお知らせいたします.
 
このプロジェクトを応援いただいている方々は,途上国開発問題とともに,気候変動問題にも関心の高い方が多いのでは?と推察しています(そうですよね?).そこで,今回は「パリ協定」の話をすこしいたしましょう.そのエッセンスは何か?そしてわたしがそのために,どう考えているか?という点になります.
 
 
気候変動問題に対応するための国際的な枠組みは,「国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)」という国際協定です.「京都議定書」もそうでしたが,「パリ協定」もその子供の国際協定です.次男坊ですね.
 
気候変動問題は,先行した成層圏オゾン層破壊問題が,

包括的な枠組条約 → 法的強制力のある議定書(モントリオール議定書)

と強化していくアプローチが成功したのを受けて,それと類似のアプローチを採りました.それが長男である京都議定書でした.
 
ただ,対象セクターが狭く,代替物質が開発され,規制が比較的容易であるこの先駆問題とは異なり,エネルギー消費に直結した気候変動問題では,そう簡単にはいきませんでした.京都議定書で先進国に対しては法的強制力の形で排出規制を課すことができたのですが,これからエネルギーを使って経済成長をしていこうとする途上国に法的強制力を持つ排出規制を拡大していくことには失敗しました(コペンハーゲン会議です).
 
それを受けて,各国が自主的に目標を設定・宣言し,それを自主的な方法で遵守するというアプローチを,次男であるパリ協定では採択しました.ただし,後退したわけではなく,

・ 1.5~2℃という具体的な気温上昇に対するゴール(産業革命前比です)が設定されました.
・ 途上国も含むすべての国が対象となっています.
・ すべての国が,5年ごとに目標を策定し,コミットしなければなりません(NDCと呼ばれます).
・ グローバルストックテイク と呼ばれる世界全体の排出目標の方向性確認が,上記の各国のNDCを合算することで 同じく 5年ごとに行われることになりました.それによって各国がより厳しい目標にコミットし対策を強化していくことが期待されています.
・ NDC目標の進捗状況などが,2年ごとに各国から報告され,それを審査するプロセスが用意されます(既存にもあるのですが強化されます). という特記すべき特徴や制度立てが用意されることになりました.
 
その他,

・ 適応策,REDDプラスという森林対策,Green Climate Fundに代表される新しい財政サポートチャンネルといった制度立てが用意されてきました.
・ MRVと呼ばれる定量化手法の重要性が認識されてきています.
・ 省庁間コーディネーション体制が強化されてきています.
・ 市場メカニズムも導入されます.

といった 一種の「進化」が,紆余曲折を経ながら,起きてきています.
 
コア部分は,
地球全体の気温ゴール設定 
← 5年ごとの グローバルな方向性のチェック 
← 各国で 5年ごと に目標(NDC)設定 
← 各国で 2年ごと に NDC目標への進捗チェック・報告
← 各国で対策を実施

というような形になります.
 
5年ごとに,グローバルに,1.5~2℃目標 にちゃんと向かっているかのチェックし,それが各国の目標強化へのプレッシャーになる... というのは,一種のPDCAサイクルのようでもありますが,実は,「目標」言い換えると「ambition」の方向性のチェックプロセスであるわけです.
 
「目標」だけが ”一人歩き” しても困るわけで,しっかり「実績」が伴わなければ,パリ協定は羊頭狗肉になってしまいます.
 
これをチェックするプロセスが,2年ごとに行われる「透明性枠組み」として用意されることになります.逆に,これが機能しなければ,ベースが揺らいでしまうことになります.
 
では,各国はどのような「報告」をすれば,各国が目標を達成し,強化していくことができるのでしょうか?そもそも,(それが審査されるとはいえ) 報告するだけで,達成できるのでしょうか?
 
この点に焦点を当て,いままでにない考え方や方法を提案したのが,わたしの論文です.日本語は,ここ にありますので,ご興味があればご覧下さい.いま,より包括的なレポートも作成していて,IGES の Flagship Report のひとつとして,ISAP という国際フォーラムでリリースされます.

基本的な考え方は,各国からの報告を 単なる報告ではなく,それを作成するプロセス自体が

・ 目標達成への進捗評価を行いやすく,理解しやすいこと;
・ 自国の国内対策を有効に進めることを促進すること;
・ 自国の目標を,定量的によりよく理解し,意味をきちんと把握できるようになること;
・ 各国の経験や教訓をシェアすること;

となることを企図します.みなさんも,なにかを文書化することが,自分の能力開発にとってとても役に立った... という経験を持ちでしょう?その効果を最大限活かそうとするものです.

そしてそれを,制度デザインとして,ルールに埋め込むという国際制度設計提案になります.
 

いま,まさにパリ協定は,その詳細ルール(運用則)を策定するプロセスにあります.今年末にポーランドで開催されるCOP 24 において,それが採択される予定になっているため,いまがんばって,世界に向けて発信しているところです.むかし CDMのときには それなりに提案が採用されたので,今回も うまく制度の中に 組み入れてもらえるといいのですが... 
 
 
 
7月 19, 20日に横浜で開催される IGES ISAP においても,議論するセッション を設けます.昨日から申し込みが開始しましたので,よろしかったら,ご参加ください.

松尾 直樹

 

ファンド情報

途上国未電化家庭用太陽光システムファンド
株式会社PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
会計期間
2019年1月1日 ~ 2021年12月31日
一口
10,500
償還率
3.98 %
参加人数
526
調達実績
17,490,000
【ご留意事項】
当社が取り扱うファンドには、所定の取扱手数料(別途金融機関へのお振込手数料が必要となる場合があります。)がかかるほか、出資金の元本が割れる等のリスクがあります。
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